道具をつくり、使うことは、
人間を他の動物から区別する条件の一つと考えられてきた。
しかし、一九六〇年になって、
これをくつがえす事実が野生チンパンジーで発見された。
タンザニアのゴンベ国立公園でチンパンジーの群れを調査していた
J・グドール博士は、デイビッドという名のチンパンジーが、
シロアリの塚に細長い草の茎を差し込み、
シロアリを釣り上げては食べる現場を発見した。
チンパンジーの野外での道具使用が初めて観察されたのである。
しかも、この「釣り竿」の材料は、
塚に行く途中や塚の周辺で吟味して選ばれ、
必要な場合は加工されて、
先端がほつれたり曲がったりすると噛み切られる。
チンパンジーは道具の材料と差し込む穴の大きさや
シロアリの大きさとの関係をよく理解していて、
特定の目的に合うようにものを加工するのである。
道具使用は、その後も各地で発見された。