アリやシロアリを釣るための草の茎にはじまり、
アリ塚を掘り返す掘り棒、
堅い木の実を割るための石や太い枝のハンマー、
木のくぼみのなかの雨水を吸い取る
木の葉のスプーンやスポンジなど、
道具の種類も用途も多種多様である。
しかも、道具と対象物のセットは地域によりはっきりと分かれていた。
ある地域ではシロアリの塚があっても
シロアリ釣りや塚の掘り返しがまったくないし、
別の地域ではアブラヤシと石がそろっていても
木の実割りなどの行動がまったくないのである。
チンパンジーの能力に地方差があるためとは考えにくい。
相互に行き来のない独立した地域集団で、
ばらばらに発生した行動が固定した結果、
使う道具も用途も集団ごとに別々なものになったと見たほうがいいだろう。
チンパンジーの地域集団には独自の「文化」が存在していて、
世代をこえて伝承されているのである。